太陽

以前から観たい観たいと思っていたこの映画。映画を観る機会を作れずに夏が終わってしまいました。
上映は終わってしまったものと思い込んでいたのですが、つい昨日、お友達の日記でまだやっていることを知りました。そして、たまたま今日がレディースディということもあり、ひとつ銀座まで観にいってきました。
http://taiyo-movie.com/


昭和天皇が自身に付与された神格性に苦悩し、戦争への全面降伏を契機として、自身も神の座から降りようとする話。しかし、「天皇宣言」を記録させていた若い従者が自害したため、その目論見は失敗するのだけども。
テーマが苦悩にあるためか、天皇政治責任の問題が希薄化し、彼を神として祭り上げてきた言説のほうに原因を求めたくなる描写であります。
ですので、たとえば、御前会議で、涙に咽びながら戦場の士気盛んな様子を天皇に報告する陸軍大臣と、国民感情にお構いなく平和を願って降伏の意を述べる天皇との間の格差に対して、様々な感想を持つことが出来ます。
たとえば
戦意を高める兵士たちを無視して「一抜けた」とそそくさに「神」を降りようとする天皇を、自身の責任に無自覚だととらえるか、それとも、彼も戦争の犠牲者の一人であり、彼の意思に反して戦意の高揚に利用されてきたととらえるか。
「降伏」という判断は、天皇は彼の地位を意図的に利用したのか。そのとき、国民の総意とのずれについては思い悩まなかったのか(このズレが、一人の従者を自害に追いやったのだ)。など。

その他印象に残った場面は
雑誌用にとアメリカ軍兵に写真を撮られる際、チャップリンを意識したポーズをとった場面。
マッカーサー天皇を「子どもみたいだ」と言う場面。
天皇真珠湾攻撃について「私が言ったのではない」という場面。
天皇疎開先から帰ってきた皇后の胸に顔をうずめ、頭をなでてもらう場面。
無邪気に「人間になるんだよ」と皇后の手をとって晴れやかに進もうとする天皇に、従者の自害の知らせが入り、明るかった表情が引きつった表情に一転する場面。
など。

天皇の苦悩を捉えて作品ですが、完全に天皇の心理に同調しているわけではなく、上記のように天皇の滑稽さ、浅はかさ、人間っぽさを垣間見させる描写がいくつも入っています。ですので、見終わった後に、断定形で簡潔に感想や意見を述べるのが大変難しかったです。はい。
作品のテーマ、内容にしては厚みがなく、だらっと長い作品ではありますが、表情やしぐさ、言葉などなど注意深く見ていると面白いですよ。


余談ですが、見た後は
「あ、そう。」
という天皇の口癖を真似せずにはいられなくなりました。
やっばい。