社会の実態と家族法(民法)Vo.1

婚姻の貞操義務は法的根拠がない(名文化されていない)。
そのかわり、「裁判離婚の理由*1として、『配偶者に不貞な行為があったとき』という規定があることの反対解釈から一般的に夫婦間に貞操義務がある」*2と考えられている。
けど、守るわけないよね(だって離婚の時にしか問題にならないんだもん)。こんな解釈は意味が無い!カントのエロエロおじさんが言っていたこと*3はなかなか抜けきらないようね。脱近代社会なのにね。人が変わってきている現在、諸制度や法や規定の変更が迫られているのではないかなあ、と思う一例。
これからもそのような法律などをあげて、「社会の実態と○○」シリーズとして連載(不定期)していこうと思う。

貞操義務に関することといえば、今話題の童貞よね。お勧めは「日本の童貞」です(渋谷知美 文春新書 2003年5月)
今日の話題に関係することが書いてあったのちょっと紹介

「女性の占有物である貞操概念を男性が獲得するなどもってのほか」(1890年代)
「1925年の夫の貞操義務に関する民法改正議論の過程で、貞操の派生語である「不貞」を男性にあてはめて使いたくない」という趣旨の発言(男爵 阪谷芳郎
男に貞操を理解してもらおうと「女性が貞操を守るのは『愛する男性に対して申し訳ないから』という理由であるのに対し男が貞操を守るのは『自尊心』」だからと説明する(巌本善治「男子の貞操」)

女には価値がなく、劣ったものであるという意識があるために、女の貞操を共有するなんて!という恐怖にも似た怒りを表していて、今考えると子供のいじめみたいなことを言っているなあと思った。そんな子供じみたことでも慣習となると、現代にまで続いてしまうのだから恐ろしい。

*1:民法770条1項1号

*2:参考:福島瑞穂 『裁判の女性学』 有斐閣 1997年

*3:婚姻理論――「異性の性器および性的能力の排他的利用契約」