授業:政治とジェンダー

問い
近年女性の職場進出が進んでいる。
(1)女性の職場進出の特徴を4つ箇条書きで書け。
(2)女性の職場進出の特徴を裏付ける要因を説明しなさい。
(3)(2)の要因の一つである労働力需要サイドの要因と、女性の『家内性』との関係性について説明しなさい。

模範解答(解答案)
(1)〓中高齢化
   〓有配偶化
   〓高学歴化
   〓勤務年数の長期化(結婚退職の減少)

(2)〓ライフサイクルの変化
    平均寿命の伸長、出生児数の減少による非育児期の長期化が女性を職場へと駆り立てる。
   〓生活様式の都市化、消費生活化
    耐久消費財の普及、経済のサービス化に伴う家事の省力化、外注化による脱家事専従となった。また、その生活を維持するための追加所得の必要性が高まったため。
   〓就労意識の高まり
    望ましい女性就労のあり方として再就職型(37%)、継続型(28%)を選択する人が増加している。(2002年 第12回出生動向基本調査より)
   〓女性の労働力活用策のありかた
    高度経済成長期の若年層男性労働力の不足は、中高年層女性のパートタイム労働を促したが、その後のサービス経済化の発展は、補助的労働力以上のものとして性格付けられた、いっそう多様な女性の就労を求めた。

(3) 企業による女性の労働政策とは、情報化・OA化の進展に典型的な専門的・技術的職種の創出、いわゆる経済のサービス化・ソフト化とともに、第三次産業に「パート向き」の仕事が次々に作り出し、そこに、一般雇用女性雇用者と比べて所定内給与、賞与、退職金、諸手当等、いずれをとっても格段の経費削減となる「パートタイマー」を振り当てるというものだ。つまり、企業の減量経費経営姿勢、そして省力化・合理的投資の進行が、単純作業・軽作業分野を拡大、そのパート化を進めてきた。このようなパートタイム労働の安定化が、企業戦略の一部として、あるいは労働力政策の一環として語られるようになってきている。
そして就労する女性の間にも「自発的」にパートタイムを希望・選択する人が増えてきた。その理由は、家庭上の切迫や必要によって副次的収入を求める際、仕事をしながら家事育児もこなすことができることが条件だからだ。すなわち「家内性」の範囲内で就労ができる、ということに短時間労働としてのパートタイマーにメリットを感じているのだ。しかしその「自発性」はあくまでも家内性の枠組みを所与のものとして、その上で「自発的に」選択しているに過ぎないことに注意したい。
つまり、パートタイム労働には二つの合理性がある。
一つには、通勤・勤務時間が短いので「家内性」の主婦に都合がいい。
二つ目は不安定な雇用・労働形態を社会的に固定化する(雇用調節や繁盛期対処、そしてコストダウンの方法として)という意味で企業にとって都合がいい。
    しかし、この二つの合理性は結果として女性のフルタイムでの職業コース選択の幅を狭める。具体的に言うならば、会社の効率能率重視は、「会社人間タイプ」の男性労働者イメージのまま女性正社員を雇用管理の基幹システムに取り込み、そうではない就労形態をとるものについては「システム外」としてカテゴライズする。男性的労働ができない女性は会社システムから排除する。すなわちこの能率主義は「男は仕事、女は家庭」といった枠組みを用いて、しかもそれを強化するような関係性を築く働きをしているのだ。
よって、いちどシステムの周縁に属してしまった再就職希望者や主婦がシステム内に取り込まれることは非情に困難であり、また、「男は仕事、女は家庭」といった規範を自ら内面化しているために、自ら「自発的に」パートタイム労働を選択することになる。正社員並みの能力・能率・経験を持ち、正社員とほぼ同等の労働に従事するのにもかかわらず、低コスト・低条件の「長時間パート」や「正社員もどき」といった雇用者郡が大量に創出されたことからも、女性の就労コース選択の幅が狭まれていることがよくわかる。また、パートタイマーの上質の労働力を見越した企業は、「補助労働力」型のパートに加えて、ある種「活用型」のパートを重視するようになってきたということで、さらにパートタイマーと正社員との賃金格差、労働条件の格差が明らかになっているといえるだろう。