大学の授業料

「芸苑」の原稿で、行政法人化と国立大学法人についての易しい説明を書いていたのだけれどね、一つ勉強になったよ。
******
法人化の検討に関連して、市場原理の導入が論じられることがよくある。新自由主義という市場論が現在政策全般に大きな影響力を持っているので、各国の大学政策でも市場原理の導入が取り上げられ、様々な試みがなされている。でもそれは日本の一部で言われている「学生が教育の買い手であり、大学が教育の売り手であって受益者である学生が必要経費を負担するのが当然だ」というような市場化論ではないんだ。

最初に市場原理を導入したのは、1980年代のサッチャー政権だった。そのときのスローガンは「グラントからコンタクトへ」つまり「補助から契約へ」というもので、この場合の買い手は政府であり、政府が大学のサービスを買うと考える。つまり、経費を負担すべきいわゆる受益者(学生・家族など)と同時に社会全体が受益者であり、それを代表する政府が、資金面で責任を持たなければならないという基本姿勢を持っているのだ。

だから、ドイツ、フランス、アメリカ、イギリスなど、国立大学の授業料は格段に安いか完全に無料。

ちょっとうらやましいよね。
これから法人化することによって、価格競争が起きればよいけれども、単に経営困難による財源確保のために授業料が増加するようだったら、国のスタンスを疑うよ。まあ今のところは増額一割までしか許可していないし、今までどおりの運営ができるよう規模の小さな大学には税金から給付するのだけれど、最終的に目指すところは完全独立なのかな、と思った。つまり、弱い大学は去ってね、ということ。
厳しいね。