成果主義の先にあるもの(経済オンチ、日経を読むより)

http://blog.livedoor.jp/cronoq/archives/855535.html

日経新聞6月9日の「経済教室」欄における東京大学教授 高橋伸夫氏の記事「日本型年功制を生かせ」についてのコメントがとても参考になった。

高橋氏の主張 (上記blogより抜粋)

成果主義には本質的に欠陥がある
 −客観的な評価はそもそも不可能では?
  (そんな暇があれば人材育成したほうがいい)
  (主観的評価と比べメリットが見出せない)
 −金銭でヒトのモチベーションは上がらない
  (金をもらえば満足、逆に下げちゃうことも)
  (報酬が減れば、さらに下げちゃう)

・日本型年功制を生かせ
 −日本企業の制度は年功序列ではない
  (報酬は次の仕事、金はあとから付いてくる)
  (仕事自体のやりがいでモチベーション向上は可能)

そしてこのblogの筆者は後者の点についての疑問を書いている。
うん、確かに日本は年功序列制だと私も思っていたから私も同様に疑問を感じてしまう。
でも、何かこのことにはあるんでしょうね。
実際に高橋伸夫の書いたものを読んだことは無いのだけれど、著作の解説文からだけでも読み取ってみようかな。
で、わかったことというのは、高橋氏は年功序列制を評価しているのではなくて、日本型年功序列制を評価しているのだ。ここに誤解が生じていたようだ。

年功序列」という言葉も、日本型人事システムの本質を正しく表現しているとはいえない。私の考えでは、日本型の人事システムの本質は、給料で報いるシステムではなく、次の仕事の内容で報いるシステムなのである。これが繰り返されることで、仕事の内容自体に加速的に差がついてくる。昇進・昇格・昇給が進むのに応じて、差がついてくる。これは正確な意味での年功序列ではなく、「日本型年功制」と呼ぶべきものなのである。
(『「虚妄の成果主義」-日本型年功制復活のススメ』高橋伸夫 の紹介文 http://smallbiz.nikkeibp.co.jp/free/RASHINBAN/20040312/104594/より抜粋)

そして、この日本型年功制を支持する理由

バブル崩壊後の1990年以降、急速に導入が進んだ年俸制成果主義に対して、私は過去10年以上一貫して反対の立場をとり続けてきた。その理由は、日本型の人事システムの本質は、給料で報いるシステムではなく、次の仕事の内容で報いるシステムだからである。
他方、日本企業の賃金制度は、動機づけのためというよりは、生活費を保障する視点から賃金カーブが設計されてきた。仕事による動機づけと、生活費保障給型の賃金カーブ、この両輪が日本の経済成長を支えてきたのである。

評価はしているが、日本型年功制に改善の余地は大いにあるともいう。

私も、高橋氏と同様に輸入された日本経済評価に翻弄されるのはよくないと思う。成果主義が日本経済システムの行き詰まりの結果から出てきた解決策ではないのならば、それが上手く行くはずはないのは当然だと思う。文脈の違うところに突然違う文脈をねじ込んでもなじまないから。こういったところに注目して、日本型年功制のすすめを説く高橋氏は、現実的・建設的案を提示しているように思えた。

この本は注目を引こうとしてこういった過激な感じを与える題名にしているけれども、そこから得るイメージによって真意が曲げられなければいいなと思うよ。まぁそういうわけで、とりあえず、この本、読んでみようと思う。