『サバルタンは語ることができるか』

サバルタンは語ることができるか (みすずライブラリー)

サバルタンは語ることができるか (みすずライブラリー)

社会の規範や慣習といったコードの中に埋もれてしまう女性による無言の抵抗実践を救い出し、当事者の立場性から問い直すことの必要性を説く。研究者の「客観性」の欺瞞を批判する様は痛快。
しかし、それでは語らぬ者に対してどのように耳を傾けるかについては、スピヴァクは語っていないように思う。
だが、それを語っているのが岡野八代の『法の政治学』だ。対象は違えど、語りえぬ他者の抵抗の声をどう聞き取るか、さらに相互に理解し合うかについてこの本から学ぶところは多いはず。分かり合えぬ「あなた」と「わたし」の間に横たわる関係性の網の目を丁寧に読み解き、未来の可能性を展望しながら「わたし」(「われわれ」に包含される「わたし」)の立場とおかれた状況について真摯に思考を繰り返す過程はまさにそれ。再読しなくちゃ。