第一波フェミニズム勉強

メアリ・ウルストンクラーフト 「女性の権利の擁護」

1章分を読むだけで要旨はつかめるような、繰り返しの多い本著。

女性にも男性になされるのと同様の、人間としての美徳をはぐくむべく教育を行うべき!
というわけで、当時ルソーの「エミール」に見られるような教育論が一般的かつ普遍的であったにもかかわらず、知性、理性、美徳は男性の占有物ではなく、教育によって身に付くものであるという彼女による発見は、当時としては画期的ではあるが、それゆえに非難の対象になったであろうことは、著者が何度も本文の中で起こりうる批判に対する弁護をしていることから容易に想像が付く。
そのような進歩的な考えでも、まだ身体的差異を「自然」として扱うがために、そこから派生する男女の性別役割分担には疑いをかけることはない。むしろ、その「自然」を神の与えたもの*1とリンクさせることによって、性別役割を各々によって達成するべきものとしている。上記で述べた「美徳」や「知性」はここで、すなわち女性は母役割、妻役割を賢く全うするために特に必要とされている。(専制政治の時代のことだから、家族形態も家事の認識もちがうのだけれど)

クールでスマートな視点で素朴な差別への疑問を分析する彼女の新しさに、つくづく感心する一冊だった。

*1:神につての哲学がウルストンクラーフトの考察の基礎である。神は人間に知性を与えた。知性を与えられた人間は決して悪いはずはない。女性も同じ人間であるゆえ、美徳のない無知な存在ではありえないはず、というのが彼女の議論の発端のようだ。