「魂を売った」

"ハリウッド映画「SAYURI」、中国での上映禁止 : ニュース : エンタメ : YOMIURI ONLINE(読売新聞)

【香港=吉田健一】23日付の香港紙「東方日報」などは、中国人人気女優チャン・ツィイーさんが日本人芸者を演じるハリウッド映画「SAYURI」の中国での上映を当局が禁止したと報じた。

 中国ではインターネット上に、「中国人の魂を売った」「国辱を忘れるな」など、中国人女優が日本人芸者を演じることに反発する書き込みも多く、映画やテレビ番組などの内容を審査する国家ラジオ・映画・テレビ総局が、世論の反発を考慮して上映禁止を決めたという。

 中国では「情人節」(バレンタインデー)に合わせて公開予定だった。

(2006年1月23日22時8分 読売新聞)

中国人の俳優が日本人の役―しかも芸者*1―を行う、その意味。
まさに「中国の国民的アイドルが、アメリカ人のデザインした日本軍国主義の服をニューヨークの街角で着て、恥ずかしげも無く中国国家の発行するファッション誌に登場した、とんでもない事件」*2と映り、一夜にして人民の敵となった『趙薇日本軍旗装事件』と同様のディスコースがそこには在るようだ。
『趙薇日本軍旗装事件』については、ちょうど「WTOに加盟し北京オリンピックを控えて、ナショナリズムが爆発的に高揚している」という時期に起きたのであり、事件をきっかけとして反日感情をさらにかきたてるマスコミ、一部の知識人、有識者たちの批判がおきたり、中国共産党による過激な反日キャンペーン、情報の規制と国民の統一が行われた。
今回の『SAYURI』の上映禁止も、首相の靖国参拝を巡っての日中韓歴史認識の不一致が、中国政府と一部の煽動による激しい反日感情が沸き起こり、その影響が拡大、結果世論を考慮して「禁止」という形で強制的な手段で決着をつけた。
しかしまぁ。チャン・ツィイー達が俳優としての才能を認められ主演に抜擢されたことついては触れられずに、ただ「韓国人」という記号を背負った俳優としてその使命を全うすることが期待されているということに、非常に違和感を感じた。
確かに、どのようなディスコース・タイプ(様々な社会的制度、空間にて行われるディスコース実践)では、どのようなイデオロギーが働き、そしてその二つがどのように行為者に働きかけてどのようなディスコース実践が行われるかを考えることは、その空間に込められた意味を解体するのに必要だとは思うけども…。

*1:芸者=売春婦である勘違いされている

*2:http://asianblue.info/zhongguo/zhaowei.htm;「鋼鉄的伝説」…事件について詳しく説明してあるよ