「内向き」目立つ日本―誇り無く、人間関係も希薄―

30日の読売新聞朝刊より。
東京大学猪口孝教授(政治学)の研究室がアジア10カ国*1を対象に実施した「アジア・バロメーター」世論調査は、アジアの国々の国民性を比較しようと初めて実施されたもので、各国とも20歳以上の約800人ずつから回答を得たものである。

そのなかのいくつかの質問項目について、気になることがいくつかあったのであげたい。

<道に迷っている人を見たら「必ず助ける」か?>
「他の人の面倒なこととどう関わるか」についての意識調査を上記の質問で対応させ、「必ず助ける」と応えた人は、
ミャンマー  :80%
インド    :74%
中国     :68%
ウズベキスタン:66%
スリランカ
ベトナム
韓国
マレーシア
タイ
日本     :37%

となっている。
そして、この結果に対して読売新聞は「見てみぬふり多い」と小見出しでまとめている。

日本を特別擁護したいわけではないけれど、調査方法に何か裏があると思って良く良く見たら、やはり結果に関係していると思われるポイントがここにあった。
それは、日本以外の調査方法は「面接方式」で、日本だけが「訪問留め置き法*2」だったということ。
面と向かって「あなたは困っている人を助けますか?」と聞かれたら、自分を良く見せようとして、あるいは自分のこととして深く考えずに善悪の観点により「はい」と言ってしまう確立は高いだろう。


以下そのほかの質問項目とその結果

<近所づきあいに満足しているか>
マレーシア(88%)、インド(81%)、ミャンマー(80%)…日本(33%…最下位)
読売の評価:「浅い近所づきあい」、「他者への感心の乏しさは地域生活の中にも現れている」

<外国人の友人がいる>
ウズベキスタン(46%)、ベトナム(19%)、スリランカ(18%)…日本(10%…6位)
読売の評価:「国際交流に消極的」

<自分の国で男女の地位が平等になっていると思うか>
全体平均:「平等」(48%)
日本:「男性のほうが優遇されている」(78%)
読売の評価:「目立つ男性優遇」「女性の地位はアジアの中でも、かなり低く意識されており」

<自分の住んでいる国の国民であることを誇りに思う>
東南アジア、南アジア各国では9割を声、韓国も85%。日本は65%(最下位)
読売の評価:「誇れない国『日本』」、「このような*3意識を反映してか、自分の国を誇りに思えないという人も、日本人は際立って多い。」


アジア諸国の国民性を比較しようという試みは面白いけれど、その文化、経済、政治背景を考慮せずに安易に結論に持ってくるのはまずいのではないか。それは比較とはいえないのではないか。しかも、日本の欠点として一般的に挙げられていることを疑うことも無く、むしろ、その一般論をより実際として裏付けるためにあるような調査は調査として間違っている。

私は、この手のナーバスで感傷的な論が大嫌いだ。
特に、「男性のほうが優遇されている」と感じる人が日本人に多いことから、女性の地位がかなり低く意識されていると引き出すところには呆れた。アジア的家父長制が根強くて性別役割分業を当然とするアジア諸国と日本では、男女平等の認識が異なるに決まっている。だから、女性の地位向上における達成段階も異なって当然。

*1:日本、中国、韓国、マレーシア、タイ、ベトナムミャンマー、インド、スリランカウズベキスタン、の10カ国

*2:調査員が被験者の家に伺って調査票を置いて帰り、数日後に再び調査員が書き終えた調査票を取りに行くか、被験者に郵送で送り返してもらう方法

*3:上記の調査結果を指して