Domestic Violence

DVの定義をid:idiot817がとても気になっていたようで、よい機会なのでちょっと調べてみた。



彼の気になる点としては”Domesticは家庭という意味であるからDomestic Violenceは「家庭内暴力」の意味ではないか”、ということだった。

確かにWikipediaには、

ドメスティック・バイオレンス」はもとになった英単語"Domestic Violence"が家庭内暴力全般を意味する言葉であるため、原語と意味にずれのある、広義の和製英語に含まれるものである。

と書いてある。
しかし、疑問がいくつかある。確かに単語の純粋な意味として、つまり和訳としては「家庭内暴力」になるかもしれないが、実際の使用のされ方はその文脈にはないのではないかということだ。つまり親密圏にある男性から女性への暴力。

第一の理由として、近年日本で知られるようになったDVという言葉だが、それはすでにアメリカで概念化されていたこと。例えば1984年にはアメリカのミネソタ州にてDAIP(Domestic Abuse Intervention Project)がDVの解決には地域社会の理解が必要であるとしてDVにおける暴力を図式化した「パワーとコントロールの車輪の図」を作成している。

二つ目の理由は、Domestic Violence のほかに Family Violence や Child abuseという言葉*1があるということから、Domestic Violence が二者間(親密な関係にある男女、同性)に限定して使用されていることが多いということ。

まず英語圏にあるHPを覗いてみてどのような意味で、文脈でDomestic Violence、 Family Violenceが使用されているかをみていった。
すると、ほとんどそれぞれの言葉に対してて意義付けることがなされていない(→意味などは周知されている?自明?)かろうじて一つずつ定義されている文章がみつかったのでのせておく。

Domestic Violence

Domestic violence is a deliberate pattern of assaultive and controlling behaviors, including physical, sexual, and psychological attacks, that one intimate partner does to another to gain power and maintain control.

It is not marital conflict, a lover’s quarrel, or just a private family matter. It is a serious social problem. The batterer may be a husband, ex-husband, boyfriend, partner (including same sex), ex-partner, or a housemate. Abuse and violence are learned behaviors.

(California Alliance Against Domestic violence)

ほとんどのサイトではDVを親密な(だった)男女間に限定し、男から女への暴力を前提として記述している。とある場所ではDVは「どのような関係も含む」と漠然と書き、男女間以外の暴力をも含むような書き方もあったことにはあった。

Family violence

“family violence” means any act, or threatened act, of violence, including
any forceful detention of an individual, which?

  • (A) results, or threatens to result, in physical or mental injury, and
  • (B) is committed by an individual against another individual?
    • (i) to whom such person is, or was, related by blood or marriage or otherwise legally related, or
    • (ii) with whom such person is, or was, residing;

(Legal Infomation Institute)

Family Violenceのはより家族(血縁関係、親族関係など)における暴力に限定している。そのほかのサイトでも、DVとこちらを区別して書く場合が非常に多い。そして特にFamily Violenceは親(主に父親)から子供への暴力に問題関心を寄せている。また、定義的には家族における各種関係が含まれることから、Domestic Violenceの一部分(夫婦関係)もFamily Violenceに含まれる。


とまぁこのような使用状況であった。

DVの訳は「家庭内暴力」であってはいけないよ。
数ある「家庭内暴力」に埋もれてしまいかねない女性に対する男性による暴力、その構造を顕在化させるためにも。

*1:Domesticは”家庭”の意だが、Familyは"家族"の意味。微妙に違うの