【労働】1.男女雇用機会均等法(均等法)とコース別雇用

男女雇用機会均等法について>
1947年に制定された労働基準法は、賃金以外の男女差別を禁止する規定を置かなかったために、男女別の雇用管理が当然のように行われていた。しかし1960年代に結婚・出産退職制度や定年年齢の男女差別などを違法とする判決が相次いで出されたこと、それにあたり女性が働き続ける権利を保障する明文規定がどこにも無いという立法の不備が明確になったこと、さらに国連の女性差別撤廃条約の批准により、均等法の制定が促された。
こうして、1985年に男女雇用期待均等法が制定され翌年から施行されたのだが、これは実効性に欠ける物だった*1。そのため、1997年均等法は改正された*2
しかし、この改正でもまだまだ課題はある。
第一に改正均等法は女性に対する差別だけを禁止する法律であって、男性に対する差別には言及していない
第二に均等法が禁止する男女別の取扱とは、一つの「雇用管理区分」の中にいる男女の異なる取扱のことを指すと解釈されている。よって、男性と女性が異なる雇用管理区分に属している場合には、異なる取扱をしても違法ではないということになる(たとえば総合職の男性と一般職の女性を異なって扱うことは違法ではないことになる)。

資料:

<均等法の影響>
確かに男女の別なく雇用の応募がかけられるようになったなどの平等化は見られる。
しかし、募集の男女差がなくなっても、実際に男女が平等に採用されているわけではなく、採用選考の段階で女子学生に不利な取扱がなされている。また、採用以外では昇進・昇格などに関する男女格差が大きく、管理職に占める女性の割合はきわめて少ない。法律が改正されても事実上の男女平等は達成されていない。

資料:

<コース別雇用の性差別性>
均等法が施行されてからは、多くの企業が男女別雇用制度の代わりに、男女がそれぞれにコースを選択する「コース別雇用制度」おを導入した。しかし実際には女性には一般職の機会しか与えられていない。

コース別雇用制度を導入している企業は24.6%(734社)であり、大企業ほど導入の割合が高いという結果が出た。
ところが、総合職に占める女性の割合は3.5%でしかなく、管理職に占める女性総合職の割合はわずか1.2%である。

労働省は2000年6月16日に「コース等で区分した雇用管理についての留意事項」を策定して、コース別雇用制殿運用のルールを提示した。

明らかに均等法に違反する行為として
〓「総合職は男性のみ、一般職は女性のみ」とすること
〓形式的には男女に開かれていても、実際の運用において男女別になっている場合
〓既存の労働者を新たに導入したコース別雇用に分ける場合、性別を理由に一律に分けたり、女性のみに特別な用件を課すなど、男女別の取扱をすること
などをあげている。
また、直ちに均等法違反だとはいえないが、留意する必要があることとして、能力や意欲によって処遇するといいう穂運来の趣旨に合った制度であること、コースの新設・変更にあたっては労働者に十分な説明を行うこと、コース間の転換制度を柔軟に設定し、女性の能力発揮に向けて環境整備を図ることなど、事業主に対する指導方針が盛り込まれている。

「採用時からコースを選択させて、生涯にわたって格差のある処遇が固定されるというような雇用管理制度にどれだけ合理性があるというのか。しかもそれが実際に男女格差のある人員配置をもたらしているとすれば、企業の側には、コース別雇用制度を採用することが、企業の業務にとってどれだけ不可欠なものなのかについて、積極的に説明する責務があるのではないか。積極的に合理性を説明できないようなコース別雇用管理制度は、コース間の男女格差を是正できない限り、均等法の趣旨に反するといえる。」(本文より)

<最近の判例
○大阪地裁の六判決(たまたま同一の裁判官によって判決がだされた6つの事件)
 塩野義製薬事件・シャープエレクトロニクスマーケティング事件・住友電工事件商工中金事件・住友化学工業事件・住友生命保険事件
野村證券事件判決(2000年2月20日
 男女間の格差は男女のコース人事処遇に由来すると認め、その部分を均等法6条に違反し、不合理な差別として公序に反するとして賠償の義務を課した。
http://www20.big.or.jp/~nomuraun/gender/trial13.html(参考:野村證券労働組合HP)

*1:事業主の努力規定であったこと、1972年の「勤労婦人福祉法」を改定した法律として生まれたため、女性の福祉に反する有害な行為以外(例えばパートは女性しか雇わないとか)は均等法に違反しないと解釈された、紛争を解決するために設けられた機会均等調停委員会がほとんど機能しなかった(当事者のからの申請があっても、事業者の同意がないと調停は開始しないから)

*2:努力規定は禁止事項へ、女性の福祉にとって有害かどうかを問わず男女別の雇用管理は法に違反すると解釈される、事業主の同意がなくても労働者からの申請によって調停は開始する、事業主はセクシュアル・ハラスメントを防止するために必要な配慮をしなくてはいけない、事業主がポジティブアクションを実行するときは国がその事業主を援助できる、という規程が設けられた